「〜少年たちの対決・第1部〜」

Dedicated to Mr. 猫GLOBEX

 

第3話:少年たちの闘い

 

僕が優勢なんてうそみたいだけど、完全に守勢に転じたMくん・・・

(いけるぞ・・・)さっきの感触をもう一度・・・つい調子に乗って力いっぱい

右ストレート・・・自分の姿を想像しながら・・・ところが!

あっ、かわされた!

うわっ、Mくんの顔が目の前に!すごい形相!

赤いグローブが飛んできた!

 

ズバンッ!

自分の顔がぺちゃんこに潰れたような気がした・・・実際そう見えたらしい・・・

 

のけぞったように吹っ飛んだ。ロープに引っ掛かるように・・・ダウンだ・・・

目の中に、マンガみたいに星が・・・頭の中がガーン、ガーンって鳴っているみ

たいだ。カウントが始まって・・・

 

「N!立てよっ!あんなヤツに負けちゃ情けねぇぞ!」

 

Tくんが叫ぶ。悔しさが込み上げてくる・・・(クソッ、立たなきゃ・・・)

カウント8で何とか立ったけど、体に力がはいらない。舌に変な味が・・・あっ、

鼻血だ!殴られて鼻血なんて経験は初めて・・・急に恐怖に襲われた・・・

 

「ファイト!」

Mくんがまた攻めてきた!さっきまでの調子の良さは消えちゃって、タジタジ・・

 

バシッ!ビシッ!

フック連打を喰ってヨタヨタと後退したところにさらに・・・(も、もうダメだ・

・・)

 

カーン!

第1ラウンド終了のゴング!た、助かった・・・

足がガクガクする・・・しゃがんじゃいたい・・・さっきのFくんみたいに、僕

も半ベソ・・・

 

「まだできるか?」U先生が聞いてきたけど、

 

「当然だよなN!」割り込むようにTくんが口をはさんだ。(そんな・・・もうだ

め・・・)

「いいか、相手は今度こそ倒そうと思って大振りになるから、それさえガードす

れば、あとは目をつぶっててもパンチは当たるよ!Nの攻撃だってすごかったん

だから、自信持っていけよ!」

 

(Tくん、コーチみたい・・・そんなにうまくいくのかな・・・)でも乗せられ

ちゃうとやる気が出ちゃう単純な僕・・・わかったふりしてうなづいた。

 

第2ラウンドが始まった!

あ・・・本当に相手はパンチを振り回して突進してきた!怖いよ!

逃げようにも足が・・・体をかがめてガードを固める、というか貝殻みたいに・・

・その上にパンチがガンガンと・・・痛い!

もう手が痛くて・・・グローブも重たい・・・

気づかないうちにガードの手が下がって・・・そこに狙っていたみたいに・・・

 

バシッ!

(ああ、またやられちゃうのか・・・やっぱりボクシングなんて、無茶だったん

だ・・・)鼻血がまた・・・

でも・・・一呼吸して気持ちを落ち着けると、相手の顔面ががらあきだ。僕はT

くんの言うとおり目をつぶって、おもいっきりパンチを出した。

 

バグッ!・・・すごい音と拳の先に手応えが・・・一緒に声も・・・

 

「ぶふっ・・・!」

 

Mくんの鼻先にグローブがめりこんだ!

その衝撃でヨロヨロとコーナーまで下がって・・・でもまたこっちをにらんでる!

 

ひゃあ、また怒らせちゃうよ・・・僕はさっきダウンさせられたことを思いだし

て怖くなって、がむしゃらにMくんの顔面を殴った!1発、2発・・・

なんかわからないけど僕のパンチがバシバシ決まって・・・あ、またあの快感が・

・・そんなこと考えてる場合じゃないのに・・・

あれ・・・気がつくと、Mくんは仰向けにダウンしていた。そしてそのままテン

カウント・・・

 

「勝者、青コーナーNくん!」やったぁ!

 

うれしい、というよりも、恐怖から解放された感じだ。ボクシングの選手ってもっ

とすごい殴り合いをするんだから、終わったらどういう気持ちなんだろ・・・

打たれた顔がほてって、ズキズキ痛みだした・・・

でも、なんだか不思議な充実感が沸いてきたような・・・

 

「Nくんは素質があるかもな!お前が打ったパンチは、カウンターっていう高等

テクニックなんだぞ!」

 

へぇ、そうだったんだ・・・先生に言われてなんかいい気分・・・

 

「すごいなN!見直したよ!」Tくんも声がはずんでる。

「俺もがんばるぞっ!」

 

そのあと、バレー部とバスケ部はそれぞれ1勝ずつして、まったくの同点。

決着をつける最後の試合は・・・なんとTくんとYくんの対戦・・・

クジ引きで決めたのに、一番対抗意識に燃える2人が決戦とは・・・あれ?先生

満足そうな顔してる・・・

 

呼び出されてリングに上がる・・・向き合った2人はホントにカッコイイ・・・

でも、もうすでに目と目が火花を散らして・・・

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その時Tくんは、Yくんを挑発するかのようにヘッドギアをはずしながら、わざと

大きな声で言った。

 

「俺はヘッドギアなんかいらねぇよ。お前なんかに殴られてたまるかってんだ!」

 

 

「バカヤロウ!つけなきゃダメだ。」U先生に怒鳴られたTくん、それでも、

 

「先生、俺、暑苦しいからいいです!」

 

「まったく・・・殴られてみないとわからないらしいな・・・勝手にしろ!」

 

「先生の言うとおりだぜ!俺がわからせてやるよ!もちろん俺も着けないでやら

ないと不公平だよな!」

 

Yくんも対抗して、ヘッドギアを放り投げた。(先生、口もとに笑みが・・・)

短パンだけの美少年2人の闘い・・・僕は腫れた顔を冷やしながら、言いようの

ない興奮を感じていた・・・

(つづく)

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