少年ボクサー憧憬 Adoration for gloved boys


その四 少年ボクサーのノックアウトシーン


ノックアウトするシーンでなく、されるシーンとお考えください.

ボクシング試合の中で、アマ、プロを問わず、もっとも華やか 

かつ スリリングなのは、やはりノックアウト場面でしょう。 本

当のところ、観戦中に皆一様に期待しているのは、これなんですね。

このへんがボクシングが他のスポーツと異なる本質なのじゃないか

な。 もちろん、どの競技だって、勝ち負けが一番大事だし、ファ

インプレーには皆惜しみなく拍手と歓声が与えられる。 しかし、

ボクシングではちょっと違うのではないか。 強烈なパンチを見事

にかわしたって、そりゃあ感心はするけれども、やったーなんて皆

さん拍手しますかねえ。 一発いいのが入って、ウオーとかアハー

とか言うかもしれないが、まあそれだけでしょ。 いっせいに拍手

が起きるのは、バターンと倒しちゃった時でしょうね。 現都知事

がどこかに書いていました。 血を流しながら戦うスポーツは他には

ない。 まことにその通りです。 僕は石原氏の言動を

まったく評価しないのだけれど、この点だけは認めたいと思う。 

さらに僕の言葉で付け加えるならば、勝敗の決定した瞬間には、勝

者は誇らしげに腕を掲げて立ち、敗者はその足元に横たわる、こん

なスポーツは他にはない。 他種目の競技でも、そりゃあ血を見るこ

とはある。 相撲で張り手をかまされて、力士が鼻血を出したなん

て光景はよくある。 ところが、こうした場合、流血で土俵が穢れ

たことになって、その晩のうちに土俵の土はぜんぶ入れ替えるはず

です。 でもボクシングではそんなことはしませんね。 最近はあ

まりないけれど、キャンバス地のあちこち、リングの中央部、それ

に各コーナー、点々と血痕の跡が染みついていた。 なんとなく陰

惨な気分になったものです。 以前はサッカーでもよくありました。

 このごろは芝生の上での競技が多いから、それほどでもないのだろ

うけれど、 以前は土そのままだから、どうしても膝小僧を擦りむく

のですね。 膝を真っ赤にして走り回っているわけです。やはり、

ボクシングとはニュアンスが違う。 そうだ、ちょっと脱線すると、

いまサッカーと書きましたが、私チャーリー、サッカーという言い

方嫌いなんです。 あれは以前は蹴球だった。 あるいはフットボ

ール、もっと正確にはナ式フットボール、サッカーなんて軽薄俗悪

な呼び名が流行し、誰も不思議がらないのは何故だろうか。 こん

な俗称を正式名称にして得々としているのは日本だけなのに。 本

題とはずれるから、ここまでにします。 詳しくはチャーリーの

HPメゾンコンセルビアに近々にかきこみます。 リンクがはってあり

ます、よかったら見てください。 さてそれで、ノックアウトです

が、 そんなにしばしば見られるわけではない。 特に最近では。

 それからもうひとつ、このGBSサイトでは、 少年ボクサーは16

歳以上不可という縛りがある。 この制限には意味があると私は思

っておりますが、やはりこれは、ノックアウトシーンを出現しにく

くしている因子のひとつでしょうねえ。 さて、少年ボクシング、

これを少々吟味してみたいのだけれど、 この「少年」という概念は

かなりあいまいです。 法律てきには20歳以下 かなり高い。 

発達心理学的には「少年」はむしろ定義されなくて、青年前期。青年

後期といった取り扱いになる。 教育現場でいえば、高校卒業まで

が常識的な線だろうと思う。 また、脱線します。 ごめんなさい。

 あたくし、どうも性格が悪くて、他人様の気に障りそうなことを書

き散らし、わめき散らすところがある。 スポーツジャーナリズムと

いうもの、あれでも物書きのうちにはいるのかねえ。 紋切り型の

表現、陳腐な発想、貧困なボキャブラリー それから

それから・・・・・・ たとえば、高校球児といいますねえ。 あんなに髭面の児がどこにいる

の? それからチビッコ、ほかの言い方はないのか。

 児童もあり、少年もあり、子供もあり、古くは少国民であり、ヨイ

コであり、まだあるかな? それなのに今ではすべてチビッコ

ああ・・・・・・ もうひとつ、悪態ついでに、どうして、スポー

ツ記者、芸能記者連はあんなにスナップ写真が下手なんだろうね。

 取材に当たって、カメラマンが同行するのが筋なんで、そうした場

合はいいんだけど、記者自身がとらねばならないこともある。 こ

れがひどいんですよ。 もう醜悪というほかはない。 さて、少年

ボクシングですが、我国では、これはむしろ特殊なことだけれども、

少年体育は学校体育が主流になっている。 だから、今日の状況で

は高校ボクシングに偏らざるを得ない。

高校ボクシングは1947年ごろ、中等学校ボクシングとして始ま

ったらしい。 旧学制では、小学校6年の上に中等学校5年がのって

いた。 中等学校とわざわざいうのは、中学校のほか、商業学校、

工業学校等の専門学校が併設されているから。 当時の記録を調べ

てみると、ルールとして、中等学校の3年以上に出場資格があり、

試合時間2分3回、今と同じです。 ヘッドギアーは使用していま

せん。 競技年齢を現在と比較してみると、中3→中3 中4→高1

 中5→高2 に相当する。 だから実年齢でいえば、14,15,

16,17くらいだろう。 当然のことだが、体位は当時の方が劣

るから、純粋に少年ボクシングといった感じは濃厚だったと思われ

る。 記録からみると、3日間続いた全日程の中で、打倒1、技倒

1とある。 これはKO と TKO のこと。 それゆえ安全管理

をしっかりすれば、ボクシングは決して危険なスポーツではないと

のコメントがついたそうです。 だから、ノックアウトはやはり危

険な現象だという認識があったんでしょう。 なお、当時は選手層

も薄く、練習開始以来7ヶ月というのがもっとも長いとあるから、

選手諸君かなり未熟だったのだと思われる。 上記の記者の予測はは

ずれました。 以後KO場面は増加していきます。 体位の向上と

ともに、つまり、背が高くなって、また重くもなっていく。 他に

もありますよ。 顔つきも大人びてくるし、声変わりも早くなる。

 腋毛も生えてきます。 レフェリーが勝者の手をあげる、あるいは

ノックダウンであお向けに大の字なんて場合、黒々とした腋の下が

見えたりするわけ。 どう考えてもgloved boysの出番が少なくなる。

 そのうち、年齢制限を16歳未満を14歳未満ぐらいに

しなければならなくなる?  先の心配はしばらくおき、現実のノッ

クアウトシーンに戻りましょう. これまでに見た、あるいは話に聞

いた、記録を読んだ・・・いろいろですが、そのうちのいくつかを

思い出すことにします。 ノックアウトシーンのいいところは、こ

んなことを書くと、実際にノックアウトされちゃった少年ボクサー

諸君怒るかもしれないな。 誰も好き好んで倒れたんじゃないや。

 やられちゃっただけだ。 いやごもっともです。 醍醐味なんて言

ったらもっと怒り狂うかな。 一番きれいな倒しかた、いや倒れか

たは、真っ向から顎に一発くらって、そのまま仰向けにバッターン

だろうと思う。 けれど、玄人筋に言わせると、膝をガクッと折っ

て、前に崩れるのが本当だという。 しかし、これは技術論であっ

て、やはり美少年ボクサーが血まみれになってリング内をのたうち

まわり、遂に力尽きて血に染まったキャンバスに沈む・・・・これ

がファンの期待するシーンでしょう。 しかし、こうしたシーン、滅

多に見られるものじゃない。 僕も実見したことはほとんどありま

せん。 多くの場合、少年たちの倒れ方は、パンチを浴びたあと、

カクッと前のめりに膝をつく、あるいはグタッとうずくまるように

伏してしまう、あと考えられるのは、横倒しに膝を曲げたまま床に

寝転がるくらいじゃないかな。 前に書いたけれど、K学園高校の某

君、多分1年生だったんだろう、明らかに初陣だったが、 ボクシ

ング部自体創部直後だったんだろうか、トランクスにシューズは正

規のものだったけれど、シャツはバレーボ−ル用の転用で、背番号

がついていた。 猫GLOBEXさんの作品、消えた??チビッコ・ボ

クシング大会に登場するサッカー美少年をほうふつとさせる情景で

す。 彼基本通りに戦っていたが、先ずスリップ気味のダウン、続

いて前に出てしまった顎にカウンターパンチ一発、ガクンとのけぞ

り、そのまま尻もちをつき、キャンバスに座りこんだままカウントア

ウト。 よくあるパターンです。 ノックアウトされると、直後よ

りも、その後のほうが苦しくなる。 発汗も激しい。. 彼もそうで、

着替えの途中で苦しくなったらしい。 白のランニングパンツ1枚

でふらふら周囲をうろつき回り、とうとうそのまま床に倒れこんで

しまった。 両手で顔をおおい、あおむけに寝転がってうめくだけ。

 彼の汗に濡れ光るしなやかな肌、、腋毛も見えない。 可愛いなあ、

実は僕、彼を抱きしめたい衝動にかられたけれど、人目をはばかっ

た。 彼の試合はもう一度見たことがある。 だいぶ後のことで、

彼は3年生になっていた。 17歳かなあ。 この時も彼はノックア

ウト負け、一度は立ちあがったが、ロープ際に追い詰められ、連打

を浴びて、前のめりにうずくまってしまった。 かわいそうに、

しかし、そのころの彼、もうあまり可愛くなくなっていた。