第三話「初めての試合」

 いよいよ僕がリングに上がる時が来た、今日の僕の格好・・

 やっぱりジムの人が用意してくれたブルーのランニングシャツ?

 それに例の短い白のトランクス・・

 やっぱり白いハイソックスにちょっぴり長めの白のリングシューズ・・・

 赤いグローブをつけられて・・

 ジムの鏡に映った僕、自分で自分を見てなんだか興奮するというか・・・変な気分だ

 それに、どう見ても見物人が多い?ざっと30人ぐらい、おじさんばかりで・・・

 サングラスしてたり?何だか異様な雰囲気だ・・・・

 コーチに「KENNいくぞ!」っていわれてリングへ・・・さっそく観客?から声が ・・・・

 「おっ!もう一人登場か!」「なかなかいい子だな!」「白パンかっこいいぞ!」・ ・・・・

 赤のヘッドギア、それからマウスピース・・・リングの中央へ・・・・

 選手紹介・・・僕が呼ばれると「ピュ-ピュ-」っていう口笛が・・・・

 相手の5年生の子、僕より背は低いけれどスポーツ刈りでがっちりした体・・・・

 黒の長いトランクスとリングシューズ、赤いシャツ・・・中々強そうだ・・・・

 思いっきり僕を睨みつける・・・「ああ・・やだな・・・」でももうしかたがありま せん・・・

 「KENN、脚を使って!思い切ってな!」コーチに言われるとついにゴング!

 見た目どおり凄い闘志で向かってくる相手、「こんな女みたいな奴に負けられるか! 」

 顔に書いてあるようだ・・・・いきなりパンチを振り回してくる・・・逃げ回る僕・ ・・

 「ほら!どうした!白パン!」後退する一方の僕、ついに左フックを・・・・

 「ヒューヒュー」口笛が・・・まずい・・・左に廻る僕・・・「1分!」

 相変わらずものすごいパンチ、手数・・・とうとうコーナーに詰められてパンチを浴 びる・・・

 「いいぞー、ダウンか?」「効いた!効いた!」・・・・・

 「KENNどうした!攻めろ!あと20!」強めのボディーが・・・・

 『もう!やけだ』右ストレートから左フック!僕も反撃・・相手も油断してたのかこ れが・・・

 クリンヒット!ここでゴング!

 「いいぞーカワイ子ちゃん!やればできる!」おじさんの野次に笑い声が・・・・

 コーナーに戻ってマウスピースを吐き出す・・・苦しい・・・やっぱり疲れるし・・ ・

 「KENN!いいか攻めろ、たいした相手じゃないぞ!」

 「リーチもお前のほうが長いし圧倒的に有利なんだから!手数!いいな」

 『そういえば結構パンチもらったけどあんまり効いてないし』その気になってきた!

 それに、やっぱり打たれるのは悔しい!それにおじさんの野次も・・・・

 2Rのゴング!

 軽くジャブを出しながら思い切って前に出る!怖いけど・・・・

 あいても終盤の僕のパンチを食って動きが変わってきた・・今度は僕が前に、下がる 相手の子に

 ジャブが当たる!「おいおい!強いじゃないかカワイ子ちゃん!」

 こうなったらやるしかない!がむしゃらにあいてに向かう僕・・・

 怖かったけど右のボディーを出してみた

 グニャ?そんな感じがした、「KENNいいぞ、いけいけ!あと1分!」

 苦痛に顔をゆがめる相手・・「どうした黒パン!」

 一気に攻める僕・・・左右のフック、やっぱり相手はボディーが効いたみたいだ、

 ガードを固めて脚が止まる!「連打!連打!効いてるぞ !」

 自分でも信じられない・・人が変わるのか・・・とにかくがむしゃらに攻めつづけた !

 今度は僕がロープにつめる・・・

 そんなに、というかまったくパンチ力なんかない僕だけど・・・・

 相手は完全にロープに詰まっている・・・お構いなしの連打・・もうなんだかわから ない・・・

 疲れた・・「あと10いけー!」右ストレート!それから左フック!また決まった!

 ガクッとなる相手!ここでゴング!

 相手の子はふらついてコーナーへ・・・「いいぞっ!カワイ子ちゃーん!」また笑い 声が・・・

 でも苦しい・・マウスピースをまた吐き出す・・・糸を引いた・・・

 「KENN!見直したぞ!それでいいんだ!」「あと1Rだ、根性でいけよ!」

 でも本当に疲れた・・・息が苦しい、また2分もマウスピースはめて・・・

 でも相手も効いている!

 それに、苦痛にゆがむ顔をみるとなんだか興奮してもっと・・・・・

 「さあ!いけよ!」

 3Rのゴングだ・・・・相手は苦しそうだ!でもまた向かってくる・・・

 よーし・・また積極的にあと2分だ!

 もう開始から脚を止めて打ち合い!

 相手のパンチは僕には届かない!もぐりこんでこようとするところに

 今度は右フックが当たった!抱きついてくる相手・・・クリンチ?ってやつ・・・

 レフリーが引き離しに来る・・・離れ際に不覚・・・相手の左フックをモロに・・・

「ヒューヒュー」「いけ黒パン!」

 頭に来た、汚い、かっとなった僕・・・「KENN脚脚!」いやだ!この野郎・・・

 またヤケクソで連打の僕、相手も出てくる、打ち合いだ・・・

 「ボディーボディー!」そうだ!思い出したように出す・・

 また当たった!相手の顔が低くなるエイッ左フック!あれ?

 「オオッ!」と驚いたような歓声・・・相手がしゃがみこんでいる!

 ダウンだ!ウソみたいだけれど・・・

 「ワン!ツー!スリー!フォー!・・・」立ち上がる相手・・

 悔しさと苦痛にゆがむ表情・・・・・

 相手のコーナーから「こんな奴に負けるな!立て!立て!」

 エイトカウントでファイト!「よし!あと40だぞ!」

 相手ももう死に物狂いで僕に向かってくる・・・

 また打ち合い・・・でももう疲れた、パンチも力が無い・・・

 僕のガードが下がる・・・そこへ相手のアッパー・・・

 クラッときた・・一瞬目の前が見えなくなるような感じ・・

 「ヒューヒュー!」「倒せ!倒せ!」「白パン効いてるよ!」・・・

 いつのまにかロープを背にしている僕・・・ヤバイ・・・でも手が出ない・・・

 脚が言うことを聞かない、棒立ち・・・

 あっガード・・・

 カンカンカンカン!ゴングだ!助かった!

 マウスピースをはみ出させてコーナーへ・・・フラッとなった・・・

 倒れるように椅子へ・・・マウスピースをダラリと吐き出して・・・・・

 レフリーが呼んでいる・・・『ああ、あそこにいくのもいやなぐらい・・』

 何とか立ち上がる・・・・

 レフリーを挟んで相手と・・・・「勝者青コーナーKENNくん!」僕の手が挙げら れた!

 何だか分からない・・「勝ったんだ・・・」そんな感じだ・・相手のコーナーに挨拶 に・・・・

 相手は「ちきしょう!お前なんかに・・・」といって・・・・

 また不思議な興奮が?

 「よくやったぞ!KENN!」コーチが僕の手を挙げてくれた・・・

 写真をバチバチ撮られてる・・・

 「カワイ子ちゃん!こっちむいてファイティングポーズ!」またバチバチ・・・

 そういえば試合中もたくさん・・・・・

 まだフラつく脚でリングを降りる・・・「ああ、終わってよかった」おじさんたちが 僕に近寄って

 背中たたいたりする・・・・それにしても、この不思議な感じ・・・何なんだろう・ ・・

 やっとグローブを外して我に返る・・リングでは相変わらず試合が・・・・

 それよりKくんは?

 最後の試合に出るらしい?メインイベント?

 可愛いKくん・・・思いっきり緊張している・・・

 「KENNちゃん!僕怖い・・・」「大丈夫思いっきりいけば、きっと・・・・」

 「KENNちゃんすごいね!」「Kくん!いつものファイト!がんばって!」

 無責任な言葉をかけた僕・・・だんだん試合が迫る!

 コーチが呼びに来た「K、いくぞ・・・・」

      続く

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