第六話「惨劇への序章」

 僕は、MくんにKOされても、ボクシングをいやだとは思わなくなっていた・・・

 Kくんも、純粋に強くなりたい・・そんな気持ちで一生懸命ジムに通うようになった 。

 そんなKくん、相変わらず女の子のような美しさ・・・・それに以前の弱々しい感じ が・・

 凛とした表情に・・「素敵だな!」そう思うようになった。

 そんなある日、ジムの後援者のおばちゃんが少年用のフロア-に会長とやってきた。

 後援者のおばちゃんKくんを見るなり目が釘づけに・・・・・

 「あら!可愛い女の子がいるのね」

 「あいつ、男の子ですよ!でも可愛いでしょ!」

 「それから、あっちの白いトランクスの子も彼の友達で・・・・」

 「まあ!あの子も可愛いのね」

 会長が僕ら2人を呼んだ・・・・

 「うちのジムでお世話になってる人だ、挨拶して!」

 「もうどのぐらい?」

 「半年近くになります・・・・・」

 「試合とかはもう?」「はい、させてもらってます・・・・」

 「そう!がんばってね!」「はい、がんばります」・・・・・

 そんなやり取りの後会長と別室へ・・・・

 その日、練習帰りに会長に呼び止められた・・・

 「おい、KとKENN、ちょっと!」「???」

 「実はな、さっきの人と話したんだけど、今度うちのジム、プロの試合があるの知っ てるよな?」

 「はい・・・A先輩とかですよね・・・」

 「でな、お前ら試合前に選手誘導係りみたいなのをやってほしいんだ」

 「え?」「お前らみたいな子がやればいいとおもってな、頼むぞ!」

 「なんだろうね?」Kくんととりあえず悪いことじゃないからいいか・・・って。

 

 試合の行われる体育館に、僕らは例のトランクスにシューズ、ハイソックス、それに ・・・

 上半身は裸・・・グローブをつけられた・・・・

 第一試合の前に、選手紹介があり、僕は青コーナー、Kは赤コーナーの選手の先頭で

 リングへ・・・

 お客さんから「かわいい!」って・・・・

 それが終わってリングを降りた後、ファイティングポーズで写真を一杯・・・・・

 これで終わりかな、「せっかくだから着替えて先輩の応援や試合見よう!」

 そこへ会長が・・・「おい!みんなにすごい評判だ!あの子だれ?ってな」

 「で、急だがインターバルの時に2人でスパーリングしてくれ!」「???」

 言われるままに2人は・・・・・

 「只今より、少年選手によりますスパーリングを行います!」

 「青コーナー○○ジム所属KENNくん!」「赤コーナー同じくKくん!」

 たくさんのお客さん・・・・「女の子がんばれー!」・・・・・

 館内が何故かとっても沸いている・・・・

 2分間のスパーリング、2人ともヘットギアなし!上半身裸で・・・・

 パンチが決まるたびにドッと歓声が・・・・

 「いけー!女の子かわいいぞ!」爆笑・・・・・

 最後は僕がK君をロープに詰めて攻撃・・・

 苦しそうなKくんの表情・・・・・

 あっという間の2分間・・・リング中央で2人とも手を上げられて・・・

 大きな拍手と歓声!くせになりそうだ・・・・

 「K、お前女と勘違いされてるぞ!」「KENNちゃんのことじゃない?」・・・・

 会長が・・・「いやー受けたな!最高!サンキュー!」・・・・

 

 そして、ついに・・・「あのこと」が2人に知らされる日が来た・・・・

 「今度な、うちのジムに少年選手呼んで試合することになった」

 「出場選手はK,KENN、M、それに中学生のS,Oだ!」

 「相手は近くの在日の外国人学校の子だ!よく練習しとけよ!」

 Mが僕らに「おい、やべえぞ、外国人学校ってあそこのことだぜ!」

 「あいつら噂だとものすごく強いらしいぞ!物心ついたときからやってるやつとか・ ・・」

 「うわー、がんばらなきゃ!」

 でも、まさか・・・そのときは負けるにしてもあんなことになるなんて・・・それに ・・・

 指名されたのはMはともかく後は強い弱いじゃないような・・・・ 

 

 その日が来た・・・・・

 変だ・・・ジムの様子が違う・・・ガラスには黒い幕が・・たくさんの客席・・・

 僕らに用意された特製の短い白のトランクスには「日の丸」が・・・・

 妙な感じのおじさんがたくさん席に着いた・・マスクとかサングラスとか・・・

 ビデオも2台セットされている・・・・

 相手の子たち・・Mの言うとおり強そうだ・・・・

 パンチの速さ・・・

 僕たちはちょっと怖くなった・・・・

 

 いよいよ試合開始、リングにはO先輩が・・・・・

 「只今より○○ジム、○○学校対抗試合を行います!」

 おじさんたちから歓声と口笛が・・・・・

 「第一試合青コーナー○○ジムOくん!」

 「青コーナー○○学校中等科Kくん!」

 ゴング!それから数分後・・・・

 僕らは本当に逃げ出したくなった・・・・・

 短いトランクスのO先輩は口から血を流して失神 ・・・・

 そ・・・・そんな・・・ 

      続く

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