夏の日の思いで2

 

第4話  決意

未明になってから瀟々とした感じにトーンダウンしていた雨も、すっかりと

夜明けの頃にはおさまっていた。

雷も途中で何度か鳴っていたらしいが、あまりはっきりと覚えていない。

深い眠りから覚めてから、大きくのびをして、ボサボサに寝癖のついたままの髪で

ベッドを降りると、シャッとカーテンを開けてベランダに続くガラス戸のサッシをガ

ラリと開けた。

カーテンを引いた時点で、ガラス越しに雨で洗われ、すっかりと生命感を取り戻した

水稲が風にそよいでいた。

旧暦の6月15日、つまり満月の日前後を狙って稲は開花するという。

花といっても裸子植物だから、花弁などといった上等なものはないが、しかし数時間だけ

咲いて、それからあっけなく閉じてしまうとあって、その正午をまたいだ数時間のうちに

秋の稲穂の元ができるというのだから、これはこれでとても不思議な感覚である。

大きく深呼吸して、胸一杯に土の香りの空気を吸い込むと、大自然の元気を貰って

いるような感じだ。

母親によると、森林や雨上がりの日はマイナスイオンが大量に発生していて体に

いいとのことらしいが、それが本当かどうかはわからない。

ただ、家の裏には沢があって、蟹なんかが生息しているし、森というか山というか、

そんなものが延々広がっている環境は確かに体に悪くはないだろう。

「純、早く降りてらっしやい!」

母親の呼び掛けに返事をしてから、トテトテと階段を降りると、

「昨日は遅かったわね。遊んでないでちゃんと勉強もなさいよ?こっちにはちゃんと

した塾も、私立の中学もないんだから」

そう言いながら、母親は父親を軽くなじるように目線をやると、味噌汁を啜りながら

「いいじゃないかお前、それより俺は、純がこんなに元気な顔をしてるのを初めて見たよ」

と意に介さない様子だった。

そして同意を求めるように、

「和也はどうなんだ?」

と聞くと、家族の中で一番小さな茶碗を片手に、

「こっちの方が楽しい〜!!」

と純と同様に日焼けした顔で答えた。

「んっとね、んっとね、昨日もゆうくんとたっちんとでグラウンドで遊んでたんだよぉ」

喋りたいことが一杯ありすぎるみたいで、言語能力が追い付かない様子が父親には

とても微笑ましく感じられた。

「んっ、もう・・・・・・・」

大きくため息をつく母親に

「お前、この前言ったろう?あっちで純がいろいろされていたのも、お前が

干渉しすぎたせいもあったんだから。男の子はもっと、自己主張がはっきりしてる

とか、自分のことは自分で決めるみたいなことが必要なんだから」

「それはそうだろうけど、私だって純も和也も可愛いの、大事な子供だし、

できればいい大学にやりたいじゃない」

そんなやり取りをしているところに純は、

「心配しないで、お母さん!僕、頑張って最低でも早稲田か慶應には入るように頑張るから!」

と、何とか口喧嘩になりかけているのを仲裁しようとかかると、さすがに

両親もそれを察したのだろう、ちょっと恥ずかしそうに口をつぐんだ。

「ねえ、もういいじゃない、ご飯食べよう!東京じゃこんなこともなかったんだから」

「ん・・・・・あ、そ、そうだな・・・・・・しかし純も言うようになったじゃないか、

ええっ?そうかぁ、でも早稲田も慶應も言う程簡単じゃないぞう、父さん、1浪したけど

結局入れなかったからなあ」

そう大笑いすると、

「笑ってる場合じゃないでしょう?まあ、そのお陰で短大の私と出会えたから

儲けものっちゃ儲けものよねぇ?」

「ん?まあそういうことに・・・・・しとこうか?」

「あっ、何その言い方!私だってねぇ、経済学部のサエない男子ってイメージしか

なかったんだから!」

 

こっちに来て、力丸とあんなことがあってからというもの、家庭の中がこんなに

明るくなった。

両親も、これまでなら母親がヒステリックにがなり立てていたであろうこんな

事態にも、こんな冗談が言い合える雰囲気にまでなっていた。

「あーあ、私はちょっと退屈。洒落たお紅茶も買えないし、デパート行っても

服の一つも欲しいのないんだもん。結婚前はツモリチサトとかいろいろ着てたのに!

ネットだってISDNまでで、ブロードバンドなんていつの日になることやら。」

「愚痴らない、愚痴らない。お前、あのマンション、いつも収納スペース

足りないとか、近所の高橋さんがイジワルだとか不満ばっかり言ってたじゃないか」

「そうだけどね・・・・うん、まあいいか。住宅公庫も利用できるのギリギリセーフ

だったから、持ち家持つのは最後のチャンスだったかもだけど」

「そういう事、そういう事!」

それだけ言うと、バサッと読んでいた新聞をテーブルに置くと、食器をシンクに

持っていってから、鞄を小脇に抱えて庭の駐車場に急いだ。

「いってらっしゃい」

「ん。純も和也も遅刻すんなよ?」

それから純も、半熟の目玉焼きと、つけ合わせの茹でソーセージと、ちょっと苦手な

ブロッコリーを片付けてから、それでご飯をやっつけていく。

「どう、おいしい?」

「うん!」

「でしょうね、東京じゃこんなに時間かけらんなかったし」

と、ちょっと自慢げだった。

するとすかさず玄関から、

「そんなおかずで時間かけたはないだろっ!」

と父のツッコミが入り、反論を待たずに愛車に乗り込んだ。

「!!もう、帰ったら覚えてらっしゃい!」

父親もかなり母親との会話が増えた気がする。

それはそれでいいのかも知れない。

少なくとも、通勤1時間の本社勤務の頃は、会話もテーブルのメモ書き

ぐらいしかなかったから、家庭の雰囲気は大幅に良くなったことは確かだった。

まあ、母親もガーデニングとやらに凝っていて、先々週の日曜日には免許を

持っている父親にまくし立てて、遠くのホームセンターにまでくり出して、

いろいろ買い込んでは『素敵なお庭』を作っているところらしい。

これまで性格がキツいだの何だの近所からまで陰口を叩かれて肩肘張って

いたくせに、こっちに来てから元々そうだったのかは分からないがやけに

少女趣味で、イングリッシュガーデンを作ろうとゴールデンクレストやら

コニファーなんかの潅木をあちこちに植えている。

これから子供が登校した後は、洗い物をしてから全自動の洗濯機に汚れ物を

放り込みつつ、ホースで大輪のビオラやらゼラニウム、それからキャンディミントや

フレンチタイム、ガーデンセージやラヴァンデュラなどのハーブなんかに散水するのが

日課になっているようだ。

農家ばかりが立ち並ぶこの村でそれもどうかと思うのだが。

「さてと、じゃあ僕も行ってきまあす、おい和也、行くぞ〜」

着替えて髪を解かしたところで、ランドセルを背負って登校する純。

 

と、そこに通りかかったのが力丸とその一味。

「おー、純オッス!」

「あ、おはよう」

と、そこに自転車通学の鉄丸。

「おう、純じゃん」

「あ、鉄丸さんおはようございます、昨日は濡れずに帰れました?」

「ん、まあな。でも汗かいたから結局またシャワーだ」

そう笑う鉄丸だったが、

「それより昨日のこと、気にすんな?それと勝負については、俺が立ち会うから。

そんな、怪我とか何とかあっちゃまずいから、シロウトだけでやっちまうのはな。

あくまで安全な条件でやってもらわないと。ボクシングってスポーツは、

一歩間違うと死の危険があるんだ、それは忘れるな!」

と、真顔で純に釘を刺した。

16オンスのグローブにヘッドギア、1ラウンド1分でインターバル2分、3ラウンド制

というルールを提案されて、

「はい」

とだけ答えた。

いつだったか孝次が罵倒してきた時はブチ殺せとかどうとか乱暴なことを

口走っていた鉄丸だが、やはりこういうところはボクサーなのだろう。

そう答えて正面に目をやると、山から孝次が道を降りてくるのを見つけて、

ちょっと言葉に困ってしまった。

しかし、孝次の方から

「何だ、不良グループが集団で登校って訳か」

などと先制攻撃。

あくまでもこっちはルールを守っているから大人も全員自分の味方、という

自信があるのだろうが、そういう優越感が純や力丸にはひどく不愉快だった。

口で言ったんだから口で言い返せ、暴力で解決しようとした方が負け、

という大人の論理を逆手に取り、殴られないのをいいことに言いたい放題というのは

どうしたものか。

実はこういう相手が一番小学校ではタチが悪く、普通はいじめのターゲットに

なりがちな訳だが、これが本当に殴り合いの喧嘩が御法度になる高校や大学に

なりだすと更にエスカレートしてくるからかなり厄介な人種と言える。

こういう奴に限って受験勉強や素行の良さの割にはもう一つパッとしない

大学に進学してしまうものだが、したらしたで『一応自分も知識階層の

末席でござい』とばかりにゼミや会議やちょっとした雑談でも蓮っ葉なディベートを

展開し、相手をねじ伏せてしまうという、『扱いの難しい大人』になってしまいがちだ。

議論のための議論に持ち込まれてしまっては手がつけられなくなるし、会議なんかは

無制限に時間が伸びて帰りが遅くなってしまう訳だが、彼もそういう手合いになる

危険性はかなり濃厚と言える。

何を、といつものように殴り掛かろうとする力丸を、軽く右腕で制する鉄丸だったが、

「まあいいや、どっちが正しいかはもうすぐ分かるからな!でも矢島も

こんな落ちこぼれ連中と付き合って、人生ガタガタだよな」

と言い捨てて先にさっさと登校してしまったのを見て、静かな声で

「力丸。試合、お前出ろ」

「はぁ?」

またかよ!

そうッッコむ気力も萎える純。

力丸と孝次では体重にして倍以上、30kg以上も格差があるというのに、

と純は指摘しようとしたものの、

「いや、むしろ俺がリングに立つ!!」

と、グッと右拳を固める鉄丸。

「ちょ、ちょっとちょっと鉄丸さん落ち着いて!」

「純!」

「は、はいっ・・・・・・」

そこで鉄丸は、憤怒に満ちた表情で、二人の鼻の間隔を10cmぐらいに近付けて、

「本番の試合、ラウンド無制限で1ラウンド3分のベア・ナックルな」

「ハアアアア!!!???アンタさっき死の危険どうこう言うてたでしょっ!」

「そんな昔の事は覚えちゃいねぇなあ!」

しかし、高校1年にもなって、小学生に対して本気で怒る精神年齢はいかがな

ものか、という気がしないでもなかったが、そういうところも力丸の

兄だからという説明で片付けられてしまうところが何とも恐ろしい。

それ以前に同じようなやり取りを暮れ返してしまうのにも問題が

あると言えばあるのだが。

しかし、孝次の『規格外は認めない』官僚的な発想はいかがなものか、

とは純も思った。

真面目なのは日頃から見ていても分かるが、深爪に近いぐらい切っていたり、

何か始めたら途中で決してやめなかったり、どうにもまっすぐすぎる不器用さを

感じられずにはいなかった。

蒼い頑なさ、と表現したいところだが、小学生の純にはまだそういった

形容ができる程の知識はなかった。

それから、今日のトレーニングメニューについて聞かされて、あまりの

量の多さに、『どんなことがあっても純を勝たせたい』という意図を

感じずにはいられない純であった。

しかし、更に放課後にプロテインを分けて貰うだの何だのという話にまで

発展していて、いよいよ純にとってはプレッシャーではあった。

「ああああああ、もう何かエライ事になってる・・・・・・」

というかもう、ぶっちゃけた話がこんなことならラジオ体操をそのまま

おとなしくやった方が結果として楽なのではないか、西野兄弟の自己満足に

自分はまんまと利用されているだけではないのか、といったことを考えると

とてもではないが試合に臨める気分ではない。

しかし、鉄丸はあそこで止めなかったら本当に孝次との試合をやってしまいそうである。

そんなこんなで話が終わってから、鉄丸は自転車で高校まで向かった。

ここから距離は大分あるのでそれだけで毎日が運動部な気がしないでもないのだが、

ここらでいうと地元の公立高校なんて、ほんのちょっと定員割れなもんだから、

実質受ければ全員合格してしまうし、進学校になれば駅まで自転車、そこから

電車で30分、更に支線からなので便数も1時間に2本と乗り過ごしたら遅刻確定な

公立しかない。

おまけに学区外になってしまうので、難易度は学区内から受験するより更に

難しくなってしまう。

落ちて入る私立といえば、男子なら鉄丸の通うK高校になるが、ここはここで

ざっくばらんな校風はいいが進学実績は今一歩、東大合格者はここ15年ゼロだという。

東京なら近くにあちこちあったし、電車はJRだけでなく私鉄も網羅されているから、

横浜ぐらいまでなら長距離通学もできないことはないのだが。

さて、それはそれとして学校に到着する。

 

教室の外からも、雨で洗われた新鮮なグリーンのみかん畑の向こうから、

絵の具から絞り出した群青にちょっとだけミルクを混ぜたような濃厚な色の

海が見える。

「ふぅ」

筋肉痛がまだちょっと体に残っている。

孝次は相変わらず模範生を気取ってツンケンした態度のままだし、もうここまで

いってしまうと、どうにかして意見の擦り合わせを図ってこんなこと事前に

中止の方向に持っていかなければ、とすら思う純。

しかし自分でもこんなにトレーニングに耐えられるとは思ってもみなかったので、

力丸と出会えたことは良かったのかも知れないとも考えていた。

「矢島君、じゃあ続き読んで」

「あ、はい!」

 

さて、そんなこんなで放課後。

「な、昨日のことなんだけどよー」

「うん?」

力丸はランドセルに教科書を詰めながら、

「あのさ、昨日、スパーやろうとしてああなったじゃん、あれ・・・・・」

「あははは、みっともない所見せちゃったね」

これについてはまだ自分でも片付いてない問題だったが、

「俺、正直やっぱり心配なんだよなあ、そこが。っていうか予想はしてた」

されていたのか、という感じだった。

力丸と一緒に通学路で

「うん、お前さあ、やっぱりこれまで喧嘩とかやったことないじゃん?

だから、度胸とかつけさせてやりたくって」

真剣な眼差しの力丸。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・そっか」

「でもな、でもお前ってスゲェよ!そんなナヨナヨした体で、そんな

根性のカケラもなければテクニックもないお前でも、俺倒したんだから!」

それは本気で誉めているのか、非常によく分からないのだが、そうこうしているうちに

自転車で鉄丸が帰ってくるのが見えて

「あっ、鉄丸さぁん!」

高校からは遠いとはいえ、期末テスト終了後ともなれば高校の方が帰りが

早くなるのだ。

しかし元気がない。

「どうしたんですか?」

「・・・・・・・・いや・・・・・・くそっ・・・・」

悔しそうに唇をギュッと噛み締め、

「俺・・・・・・・今日ほど自分が情けないと思ったことはねぇ・・・・」

何があったのかぐらいは、二人にも何とか想像がついた。

きっと部活でスパーリングでもあって、その時同じ1年にいいようにして

やられたというところだろう。

「何言ってるんですか鉄丸さんっ!僕っ・・・・・鉄丸さんかっこいいって

思ってます!ほんとです!」

「純・・・・・・・・・」

このままじゃいけない、そう純は思って

「今日は力丸とスパーさせてください!」

「じゅ・・・・・純!?」

「へへへへっ、手加減しないからね!」

「・・・・・・・・おうっ!」

正直自分からそんなことを言い出すなんて思いもしなかった、しかし純の

表情は本気そのものだ。

自分ですら勇敢に闘うのだから鉄丸も、という気持ちで一杯なのだろう。

「よし、分かった!」

 

力丸の自宅。

トランクス一枚で、マウスピースを噛み締めると、純はリズムを取りながら

両腕を回すと、グローブを軽くパンパンと叩きあわせた。

純のトランクスは鉄丸が小学校の頃にジムに通っていた時のものらしい。

もっともそのジムも、過疎が進んだせいで市街地近くに移転してしまったらしいが。

「おっ、やる気満々だな!」

見ていて鉄丸さん、僕でもこんなにウェイトの違う相手とやり合うぐらいの

勇気が身に付いたんだよ、それもこれもみんな鉄丸さんのお陰なんだ、

この勇敢さは鉄丸さんがくれたものなんだ・・・・・・・・。

そんな気持ちが伝わるように。

「ファイト!」

開戦の合図と同時に、荒縄を張ったリングの中で打ち合う純と力丸。

打ち合いになっちゃこっちに勝ち目がない、というのはもう鉄丸から

言われていることだった。

力丸の褐色に日焼けしたプリプリの体から、どんどん汗が水玉になって

飛び散る。

ツンツンの坊主頭もまるでハードジェルで固めたように放射状に伸びている

ように見えた。

「はあっ、はあっ・・・・・・」

思いきり酸素が欲しい、と純は思う。

隙を突いてジャブ3連発!

腕でガードされたものの、力丸もこれで本気になったのだろう、

一気に懐に飛び込んでくる。

まずい、と純は思った。

シュッ、と純のカウンターが力丸の左耳の横をすり抜けたところに重たいボディー!

「うぐっ!」

純の貧弱な腹筋にはきつすぎる洗礼。

「うえっ・・・・・・」

やばい、と思った時にはもう完全に捕まってしまっていた。

ベシベシとサンドバッグのようにロープ際に追いやられてしまう純。

リングシューズにマットという正式な試合だったら、高いキュッキュッ、という音が

耳をかなり刺激するような動き。

華奢だし、足が長い、と言い切るにはちょっとどうかと思うが、平均程度には

均整の取れた体格の純だが、相手が悪すぎる。

「うっう・・・・」

かすかなうなり声が力丸の耳もとど漏れる。

クリンチで、力丸の筋肉は細い純の腕の弾力や骨格をはっきりと確信していた。

ドキドキと激しく脈打つ鼓動も。

しかしそこで、ファウルカップをつけていないことがちょっと恥ずかしく感じられた。

「このぉっ!」

ガツッ!

純の力任せの左フックが力丸の丸い顎先を捉える!

「のっ!」

一瞬グラっとしながらも力丸が反撃しようとしたところで鉄丸は制止した。

 

「そこまで!」

ハアハアと乱れた呼吸でその場にへたばってしまう純。

緊張が一瞬で解けたせいか、鉛の入ったリュックサックでも背負ったかのように

ズシリと体が重たいが、体の中の闘争心はまだ、純に闘えと命令し続けている。

それがどうにもワクワクしたものに感じられた。

力丸もかなり呼吸が乱れていたが、目線が合うと、何故か爆笑してしまった。

「や、やるじゃん純も!」

「あはははは、うん!」

鉄丸は満足そうに何度も無言で頷いてから、

「よし、じゃあさっきのスパーのアドバイスいくぞぉ」

「はい!」

 

トレーニングが終わって、鉄丸は純が帰り支度をしているうちもシャドーに

余念がない。

きっともうすぐある試合の相手とのことを考えているんだろう。

「じゃあ、僕これで!」

「ん、おお!」

簡単に挨拶だけすると、純は自宅まで走った。

やっぱり試合は逃げずにやり抜こう、そう決意した純だった。

 

それから2日。

いよいよ約束の対決の日の朝がやってくる。

 

(5話に続く)

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